さきラボの「エッジ制御盤」は、生産ラインや設備のすぐ近く(エッジ)で動作する「FA 環境に対応した IT システム」を構築するための、小さな制御盤です。

  • 制御盤としてかなり小さく、生産ラインや設備のすぐ近く(エッジ)に設置できます。
  • 小型のシングルボードコンピューター(ラズパイ)と PLC が実装されています。
  • FA 環境に対応した IT システムに必要な機能が、改造可能なサンプルアプリケーションとして実装されています。

「エッジ制御盤」を利用すると、FA (Factory Automation) の経験が浅い IT 技術者でも比較的簡単に「FA 環境に対応した IT システム」を作ることができます。

IT システム運用の課題

国内の工場では PLC を中心とした制御システムが主流です。また、国内ではユーザー企業の IT 技術者が不足しています。そのため、国内の工場では「FA (PLC) の技術者は常駐していても IT (PC や Raspberry Pi) の技術者はいない」という状況が珍しくありません。

出展:経済産業省 (2017) 製造業を巡る現状と政策課題

FA と IT の違い

FA の世界では動かすことよりも止めることが重要だと考えられています。

自動車を例にして考えてみましょう。「よく走る、よく曲がる、でも上手く止まらない自動車」と「走りはイマイチだけど確実に止まる自動車」があったとして、人や荷物を運ぶのにどちらを選ぶのか…普通は「確実に止まる自動車」が選ばれるはずです。

ところが、IT の世界では話が違ってきます。IT の世界では、世の中の変化に対応するために「ベータ版でもリリースする」というのが常識とされています。

正しく止めるために非常停止から実装する FA の開発と、少しでも動かして早期リリースを目指す IT の開発とでは、根本的な考え方が大きく違っています。だから IT のシステムに FA の機能を要求してもあまり上手くいかないのです。

従来の方法

PC + PLC 制御盤

国内の一般的な工場には IT の技術者が常駐していません。そのため、工場の稼働を支えるシステムは FA の技術者が運用できるように作る必要があります。

工場で IT を活用する際には「FA の一部に IT を利用する」という方法が一般的です。

flowchart LR
A[設備等] --- B[PLC] --- C[パソコン]
subgraph 制御盤
B
C
end

設備等を動かす処理は PLC に実装します。パソコンが無くても動かせるように実装します。

この方法であれば、パソコンにトラブルが発生したとしても、最悪の場合パソコンを切り離して PLC 単独で運転すれば設備等を動かすことができます。FA の技術者による一次対応ができる、IT の技術者が常駐していない工場で IT を利用するための実装方法です。

課題

従来の実装方法には、以下の課題がありました。

  • 小さくできない (クーラーなしで密閉型にすると冷却不足になる)
  • FA と IT の両方に対応できる技術者がいないとシステムを作れない

これらの課題を解決するために「エッジ制御盤」の開発は始まりました。

より小さく、より簡単に

さきラボの「エッジ制御盤」は、従来の制御盤を小さく、開発しやすくしたものです。

スチールボックス

筐体として、水切りのあるスチールボックスを採用しています。

  • W 315mm / H 280mm / D 157mm (ランプとスイッチの突出部を除く)
    • FA 向けのパソコンラックと比べて 5% 程度の体積
  • 密閉タイプ (完全な密閉ではありません)

ラズパイ

小型 PC として Raspberry Pi 4 を採用しています。

  • 消費電力が少ないため、電源が小さく、システム全体の発熱も少ない
  • 自然空冷専用ヒートシンクにより、真夏の制御盤内でも安定した動作を実現
  • 産業用 microSD カードと FA 向けのセットアップにより、長期安定動作を実現

サンプルアプリケーション

ラズパイと PLC にはサンプルアプリケーションがセットアップされています。

  • ラズパイと PLC の通信間隔は 100ms 以下、異常検知までの時間は 300ms 以内
    • 設定により、より高速な通信、より高速な異常判定も可能
  • どちらの実装も自由に改造して利用可能
    • 改造後のライセンス表示不要
    • 改造後の再販制限なし
    • 「エッジ制御盤」以外の環境での利用もOK

ラズパイ

Python + Sanic で実装された PLC 連携アプリがセットアップされています。

  • PLC と定期的に通信するサンプル
  • 外部データを読み書きするサンプル
  • PLC のデータを読み書きする Web API のサンプル

画面表示には Firefox ESR を利用しています。

  • 更新の無効化など、FA 環境向けのポリシーを適用済み

OS は Ubuntu 24.04 LTS です。(2025年現在)

  • TCP 設定の最適化や OOM Killer 無効化など、FA 環境向けの設定を適用済み

PLC

ラズパイとの通信を監視する処理 (ラダー) が実装されています。

  • 電源が投入されたら 緑ランプ が 点滅 (ラズパイ動作開始待ち)
  • ラズパイが動作を開始したら 緑ランプ が 点灯
  • ラズパイの動作が停止した場合には 赤ランプ が 点滅

その他の仕様

  • 入力電圧 AC 85 ~ 264V / DC 120 ~ 370V 対応
    • 内部機器アース接続済み
  • ファンレス仕様、周辺温度 0℃ ~ +40℃ に対応
  • 5インチディスプレイ 搭載
    • 解像度 800 x 480
  • MP3 報知器を搭載
    • 最大15種類の鳴り分けが可能 (初期設定では 4種類)
  • Ethernet スイッチを内蔵

接続図

graph LR

Q[設備等]
E[Ethernet
Switch]
L[ランプ]
S[スイッチ]
P[PLC]
B[MP3報知器]
T[端子台]
X[外部ネットワーク]
D[ディスプレイ]
R[ラズパイ]
U[USBデバイス等]

Q --- T
T --- P
T --- L
T --- S
T --- B
P --- E
E ---- X
E --- R
R --- U
D --- R

subgraph エッジ制御盤
  T
  L
  S
  B
  P
  E
  R
  D
end

価格と納期

標準価格:500,000円 (税別)

  • 商社様向けに卸価格の設定があります。
  • 数量割引があります。

納期:入金後2週間程度

  • 注文数が4個以上の場合には納期の調整が必要です。