本当は難しくない、生産ラインのネットワーク化

生産ラインのネットワーク化には多くの費用と時間がかかる…と、一般的には考えられています。一体、何にどのくらいの費用と時間がかかると考えられているのでしょうか。

一般的な見積もり (設備30台のケース)

一般的な認識については、さきラボの知見を紹介してもいいのですが、ここでは AI に見積もりを依頼してみたいと思います。

見積もり条件は以下の通り、10年くらい前に作られた生産ラインをネットワーク化するケースを考えてみました。

工場の生産ラインをネットワークする場合の費用と納期について、一般的なところを教えてください。見積もり条件は以下の通りとします。

  • 生産ライン全体をネットワーク化して、全ての PLC (PMC) とタッチパネルに対して通信できるようにする。
    • 30台の設備で構成されている金属部品加工ライン。
    • 加工の他、検査、搬送、その他の周辺設備を含む。
    • 三菱18台、キーエンス4台、ファナック8台。
      • 三菱のうち10台と、キーエンスのうち2台には、設備内 LAN が構築されている。
        • IP アドレスは設備メーカーの初期設定になっている。
        • IP アドレスの変更は、設備内のあらゆる機器に影響する改造となる可能性がある。
      • その他の PLC (PMC) には Ethernet I/F が内蔵されている。
        • 三菱とキーエンスの内蔵 Ethernet は、タッチパネルとの通信に使われている。
        • ファナックの Ethernet は利用されていない。
        • IP アドレスはメーカーの初期設定。動作確認まで対応すれば、変更は可能。
  • 生産ラインは既に稼働している。1日10時間、週6日の稼働とする。
    • 長期休暇なしでネットワークを構築する必要がある。
    • 休業日の全日と、平日の夜間に工事が可能。工事の翌朝には生産立ち会いが必要。
    • 高所配線が必要。高所配線作業は休業日のうち2日で完了させる必要がある。
  • AC 100V の電気工事、サーキットプロテクタ設置までは工場側で対応、見積もり範囲外とする。
  • DHCP サーバーとファイアウォールを用意すること。
  • PC サーバー等を使わず、ネットワーク機器だけで完結させること。
  • ネットワーク機器は盤用クーラーのない制御盤の中 (0℃ ~ +55℃) に格納すること。
  • 情報収集、分析、可視化などのシステムは含めない。ネットワーク構築だけの見積もりとすること。
  • 見積もりには設計費、工事費、PLC の設定変更と動作確認、設備メーカーの費用などを含めること。

AI による回答

いくつかの AI に複数回の問い合わせを実施して、よく出てくる回答をまとめてみました。カスタム指示やメモリは全てクリアした状態で確認しています。

ものすごく大まかに言うと、費用 1,100万円前後、納期 5ヶ月前後がボリュームゾーンでしょうか。確かに、費用も時間もかかると思われているようです。

ちなみに、ネットワーク構築の方法は全ての AI でほぼ同じで「産業用 NAT スイッチを使う」という想定になっていました。

費用納期
ChatGPT 5.2 Thinking800万 ~ 1,300万円3 ~ 5ヶ月
ChatGPT 5.2 Thinking Extended1,000万 ~ 2,600万円5 ~ 8ヶ月
Gemini 3 Flash Thinking800万 ~ 1,500万円4 ~ 6ヶ月
Gemini 3.0 Pro900万 ~ 1,400万円3 ~ 4ヶ月
Claude Sonnet 4.5700万 ~ 1,400万円4 ~ 6ヶ月
Claude Opus 4.61,100万 ~ 1,900万円4 ~ 6ヶ月
Claude Opus 4.6 拡張1,000万 〜 1,900万円3 ~ 5ヶ月
  • 安価なモデルについては、質問する度に費用が倍以上違ってくるため、信頼性がないものと判断して除外しました。
  • ChatGPT 5.2 Thinking Extended の 2,600万円 は「設備内 LAN の IP アドレスまで全部変更する」という、全く何のメリットもない非現実的な話でした。除外してもよかったのですが、何度試しても同じような感じに出力されるので、参考として記載しておきます。

さきラボの見積もり

FA++ の「生産ラインのネットワーク化」ページでは、上記の見積もり条件とほぼ同じ条件での費用例を紹介しています。

費用は 300万円 ~ 380万円、納期は 1 ~ 2ヶ月です。

なにがそんなに違うのでしょうか。Gemini 3 Flash の最低費用 800万円 と比べてみました。

Gemini
800万円
さきラボ
350万円
さきラボの「安さの理由」
ネットワークの設計150万円40万円技術者1人で設計できるため、打ち合わせ時間が激減します。
ハードウェア費用250万円40万円安価な IT 系の製品を採用、1台で複数の設備に対応できます。
ネットワーク工事150万円140万円標準的な部材を採用することで、工事も少しだけ安くなります。
PLC 設定、動作確認150万円100万円機器の数が少なく、人数も少なくできるため、安くなります。
その他の費用100万円30万円機材も部材も安価で、何より工数が少ないため、安くなります。
納期4 ~ 6ヶ月1 ~ 2ヶ月設計が早く、機材も部材もすぐに入荷するものを採用しているため、工事日程さえ合えば1ヶ月で完了します。

工賃はほぼ同じ

さきラボの見積もりでも、Gemini の見積もりでも、工数とその単価については殆ど同じ水準で考えられているようです。

比較のポイントは「ネットワーク工事」です。ここは殆ど金額が変わりません。なお、さきラボの見積もりが少し安いのは、さきラボの工事要件のほうが実際に工事が少し楽だから、という可能性が高いと考えられます。ちなみに、工事要件の詳細については非公開ですが、トラブルの元になる過剰な実装をしないように指定しているだけだと言えば、その道の専門家には想像がつくのではないでしょうか。

その他の項目については、そもそも工数が大きく異なるため、直接的な比較はできません。ただ、さきラボの見積もりが「工賃を下げているわけではない」という点については、ご理解いただければと思います。

機材と部材の費用が違う

250万円 vs 40万円。ハードウェア費用の差は圧倒的です。

Gemini の 250万円 は、産業用の NAT ルーター、スイッチ、管理用ルーターが想定されている上に、LAN ケーブルやコネクタについても高価なものが想定されています。そして…トラブルが発生しやすい構成になっています。残念ながら、それは一般的な構成です。

さきラボの 40万円 は、非常に安価でタフな MikroTik 製品によるネットワーク構築を想定しています。4台の hEX、6台の RB260、1台の RB5009、これらを合わせても本体価格は15万円もしません。電源をつけても20万円程度です。特別なケーブルや特別なコネクタは使いません。制御盤内への設置には一工夫必要ですが、それくらいです。

その上で重要なことは、さきラボの構成の方が、巷の一般的な構成よりもトラブルが発生しにくいということです。

設計の工数が違う

150万円 vs 40万円。ネットワーク設計の費用にも大きな差があります。

Gemini の150万円には、プロジェクトマネージャ、ネットワーク (IT) 担当者、設備 (FA) 担当者という3人の登場人物が出てきます。設計に際しては3人でお客様から話を聞いて、3人で相談する必要があります。一般的に、IT の人は FA のことが分からず、FA の人は IT に詳しくありません。打ち合わせや検討には多くの時間がかかります。

これに対して、さきラボの40万円では IT と FA の断絶がない上に、「技術者1人で対応できる仕組み」が既に構築されています。設備内 LAN に接続されている機器については「ゲートウェイ設定もそのままで」ネットワーク化することまで可能で、柔軟なネットワーク設計が可能です。打ち合わせの時間は殆ど必要ありません。

ちなみに、他社がさきラボのやり方を真似できないのは、ネットワーク機器が違によります。一般的な産業用のネットワーク機器では、そこまで柔軟なネットワーク設計に対応できないのです。さきラボが MikroTik 製品を採用している理由は、安さではなく、その方が色々と上手くいくからです。

設定やその他の費用も違う

PLC 設定、動作確認、その他の設定を合わせて 250万円 vs 130万円。上記の2項目ほどではありませんが、これも十分に大きな差でしょう。

この差を生み出しているのが、機材と設計の違いです。機材の費用は半分以下、設計の工数は 1/3 以下、さらに設定の一部は設計資料からの自動生成に対応しています。それでも費用が半分にならないのは、最終的な動作確認の数が変わらないためです。

タネも仕掛けも実績もある低価格

ここまで合わせて 800万円 vs 350万円。いかがだったでしょうか。

さきラボの見積もりには、無理も手抜きもありません。問題があるとしたら、金額が安すぎて (他社が無駄に高すぎて) 品質を疑われることがある、ということくらいでしょうか。この記事も、信じるかどうかは「あなた次第」です。

なお、さきラボのネットワーク構築は、大工場の複数ラインで既に10年以上の実績があります。加工のラインでも、組み立てのラインでも、FA 制御の通信でも、IT 系システムの通信でも、様々な実績があります。

技術があれば、簡単に、安くできる

さきラボの「生産ラインのネットワーク化」は、特別なことをしているわけではありません。

  • 工場や設備メーカーの要件に対応できるネットワーク機器を選定
  • ネットワーク機器の機能を活用する適切な設計とセットアップ
  • 無駄と無理のない適切な工事

言ってしまえばこれだけ。技術者として、やるべきことを正しくやっているだけです。ただそれだけのことで、ネットワーク構築を簡単に、安くすることができるのです。

世界の技術は、日進月歩で新しくなっています。古いやり方にこだわらなければ、様々な選択肢があります。さきラボの「生産ラインのネットワーク化」は、そんな選択肢の一つです。

この記事の投稿者

崎 洋佑
崎 洋佑プログラマーもどき
さきラボの代表取締役。自称プログラマーもどき。
開発でよく使う言語は日本語。
IT技術よりも人が好きな、天然物のエンジニアです。