一ヶ月前の話ですが、異能vation事業の研究者として採択されました。

異能(Inno)vation | 本採択者 研究テーマ

私の研究テーマは「車とアプリをつなげるプラットフォームとなる製品」です。

たまに勘違いされるのですが、車と繋がるアプリケーションを作ろうという話ではありません。アプリやサービスを簡単に作るためのプラットフォームを作ることが私の目標とするところです。

パソコンの時代

冒頭の写真は、2009年に Microsoft TechEd のライトニングトークで資料として使うため撮影したものです。当時は世の中にタブレットPCがなかったので、コンピュータを車載しようと思ったら産業用PCか車載用PCを利用するのが一般的でした。

ところで当時は「タッチ操作を適切に処理する方法」が開発者に理解されていませんでした。そのため、実際の操作にはキーボードとマウスが必要となり、現実は右の写真のような状態でした。

今では冗談のように見えますね。

2009年当時と今とで何が違うのでしょうか。多くの開発者が「タッチ操作を適切に処理する方法」を身につけたのでしょうか。

タブレットの時代

一般的なアプリの開発者は、タッチ操作の処理を作ったりしません。それどころか、タッチ操作とマウス操作の本質的な違いを理解している人は今でも皆無というのが現実です。

それでも今では沢山の「タッチ操作で使えるアプリ」が作られています。アプリ開発者を支えているのは「タッチ操作に対応したプラットフォーム」です。

「タッチ操作に対応したプラットフォーム」というのは、単にタッチパネルが搭載されているということではありません。「タッチ操作を適切に処理する方法」が予め用意されていて、開発者がそれを簡単に利用できるようになっているということがとても重要です。性能の良いタッチパネルだけなら2009年の車載PCにも搭載されていたのです。

タッチ操作以外にも、今時のスマートフォンやタブレットのプラットフォームでは、インターネット接続や無線の処理、各種センサーの処理など、様々なことが簡単に実現できるようになっています。ハードウェアを活用するためのプラットフォームは十分揃っていると言えるでしょう。

さて、タッチパネルや無線などのハードウェアは上手く使えるようになったとして、これからは何が必要になるのでしょうか。

ソフトウェア、サービス、プラットフォーム

「車とアプリをつなげる」というテーマについて、研究開発に取り組んでいる人は既に大勢います。車とアプリをつなげる方法も既にあります。ELM327 というICは車とつながる装置の代名詞となっていて、多くの人が ELM327 を利用しています。

しかし、残念ながら既存の ELM327 製品は、様々なアプリを開発する土台としては不適当です。それでも多くの人が ELM327 を利用するのは、それが「用意されている方法」だからです。

アプリやサービスの開発者が「用意されている方法」を利用するのは自然なことです。料理をするのに食材や調理器具や食器を一から作る人はまず居ないでしょう。絵を描くのに画材やキャンバスから作るという人も殆ど居ないと思います。

今時のアプリ開発で言うと、ソーシャルネットワークの機能を利用するのに独自の SNS を作る必要はありません。Facebook を使えばいいのです。ブログを作るために一からプログラミングする必要もありません。WordPress を使えばいいのです。インターネット上で情報を探したいなら Google を使えば解決します。

Facebook も WordPress も Google も様々なアプリやサービスを作るためのプラットフォームとして利用されています。プラットフォームという言葉がハードウェアと OS だけを指していたのは昔の話です。多くの人が様々なアプリやサービスの開発に利用することができ、利用者が増えることで価値を増すようなソフトウェアやサービスは、プラットフォームとなり得るのです。

車とアプリをつなげるプラットフォーム

アプリやサービスに求められる機能や性能は今後ますます高度になっていくことが予想されます。どんどんレベルアップする要求に対応するためにも、これからは様々なプラットフォームが求められるようになるだろうというのが私の基本的な考えです。

「車とアプリをつなげる」というテーマについても、私は「プラットフォームが求められている分野」だと考えています。

既存の仕組み (ELM327) では、車の診断情報を取得するくらいのことしかできません。情報の更新は遅く、複数アプリから同時に情報を取得することもできません。「様々なアプリから利用する」仕組みとはほど遠く、ハードウェアを大量生産して安くしたくらいではプラットフォームにならないのです。

「車とアプリをつなげるプラットフォーム」を実現するためには、車とアプリを適切な方法で接続する必要があります。そのような製品はまだ世の中に存在しないので、作る必要があります。

また、車とアプリがつながって通信できるというだけでは車の情報を使える状態にはなりません。アプリから簡単に車の情報を利用するためには「車の情報を適切に扱う方法」を用意しておく必要があります。「車の情報を適切に扱う方法」を用意しなければ、タッチパネルがあっても使い物にならなかった2009年の車載PCと同じことになってしまいます。

ハードウェア(製品)とソフトウェア(情報を扱う方法)を組み合わせた、アプリ開発者が誰でも簡単に車の情報を利用できる仕組み、それが私の考える「車とアプリをつなげるプラットフォーム」です。

今年の目標

私が考える「車とアプリのプラットフォーム」を作るためには、最低でも「ハードウェア」と「Webサービス」を作る必要があります。データを集める必要もあるし、SDKもサンプルアプリも作りたいところですが、異能vationの予算と時間で全てを作り上げることは不可能です。プラットフォームをある程度カタチにするためには、異能vationが終わった後にも何らかの方法で研究開発を続ける必要がありそうです。

最低限の「ハードウェア」と「Webサービス」を作ること。異能vationが終わった後にも研究開発を続けられる体制を作ること。まずはこの2点を目標に頑張りたいと思っています。応援していただけたら幸いです。

この記事の投稿者

崎 洋佑
崎 洋佑
さきラボ代表の崎 (さき) です。主に経営、営業、開発を担当しています。
コンピューターよりも人が好きです。よく使う言語は日本語。プログラマーもどきです。