だから iPhone は素晴らしい

「さき的視点@livedoor」で公開されていた記事です。

日本で iPhone 3G が発売されてから1年半、iPhone 3G S が発売されてから半年以上が過ぎました。

iPhone 3G S の好調な売れ行きは ITmedia の「携帯販売ランキング」などで確認することができます。このランキングで iPhone 3G S は他のケータイと異なり容量別 (16GB、32GB) で掲載されています。にもかかわらず iPhone 3G S 32GB は発売開始から今まで常にランキング圏内で平均順位は2.8位、16GB モデルも 32GB モデルには及ばないものの、ランキング上位の常連です。

なぜ iPhone がこれほど売れるのか…ソフトウェア技術者の視点から3つの理由を挙げてみたいと思います。

1.ほとんど何もできないホーム画面

iPhone のホーム画面にはアプリのアイコンしかありません。僅かに追加の情報として、画面の最上部に電波と時刻とバッテリーの情報が表示されています。

アプリのアイコンを並べ替えることはできますが、他にカスタマイズらしいことは何もできません。壁紙の変更もできません。アイコンには時々「バッジ」とよばれる数字が表示されることがありますが、表示方法は一様です。

Apple に、ホーム画面のカスタマイズ機能をつける技術力がなかったのでしょうか。それとも開発費をケチったのでしょうか。そうではありません。

ホーム画面でできることは「アプリを起動するだけ」です。誰が見てもアプリを起動するための画面に見えます。(ページをフリックする操作を除けば)ホーム画面で迷う人は殆ど居ないはずです。

さらに iPhone では唯一のボタンらしいボタンである「ホームボタン」を押すことでホーム画面に戻ることができます。iPhone のホーム画面は、ユーザーの「わからない」を解決できる、とても優秀なユーザーインターフェースなのです。

ちなみに Windows Phone と Android のホーム画面はとても複雑です。Windows Phone と Android の開発者は iPhone のホーム画面を見て「何もできない役立たずの画面」だとでも思っているのでしょうか。残念なことです。

2.マルチタスク非対応

iPhone ではマルチタスクが禁止されています。iPodの音楽再生機能やメールチェックなど僅かな例外を除いて、同時に複数のアプリを実行することはできません。マルチタスク機能がないことを iPhone の欠点だと言う人も多いようですが…そのような発想は改めた方が良いかもしれません。

iPhone には「シングルタスクという機能がある」のです。この機能のおかげで、ユーザーは、ホームボタン一つで確実にアプリを終了することができます。

シングルタスクは開発者にもメリットがあります。動作環境を把握しやすくなるので、ユーザーサポートが楽になるのです。

iPhone の場合、同じ機種、同じバージョンの OS で、同じアプリを動かせば、誰でも同じような結果が得られます。当たり前のことのように思えますが、Windows Phone や Android ではこの当たり前が通用しません。Windows Phone や Android のマルチタスクは、物事を複雑にしています。

3.無駄に動くスクロール機能

iPhone は画面を指でドラッグすることでスクロールすることができますが、このスクロール機能に、なぜか表示するものが何もない、範囲外までスクロールするようになっています。

この「表示の範囲外にスクロールする機能」も iPhone の重要なポイントの一つです。たくさん動いた方が派手だから、という話ではありません。

スクロールが表示の範囲外まで動くのは、ユーザーの操作に対して iPhone が反応していることをわかりやすくするための機能です。

iPhone では、ユーザーの操作にできるだけ多く応えることで「反応の良い、操作しやすいデバイス」の雰囲気作りをしています。これは「必要なことしか話さない人」よりも「相づち上手な人」のほうが接しやすいというのと同じです

ユーザーの操作に対して積極的に応える iPhone のユーザーインターフェース比べ、Windows Phone や Android のユーザーインターフェースはあまり一方的です。表面だけ比べたら似ているところもありますが、根本的なところが違うのです。

だから iPhone は素晴らしい

私は Apple 信者ではありません。Apple よりも Microsoft が好きだし、Snow Leopard よりも Windows 7 が好きだし、Mobile Me よりは Google のサービスが好きな、どちらかと言えば Apple を嫌っているタイプの人間です。

しかし、そんな私から見ても iPhone は優れたデバイスです。Windows Phone や Android と比べて、iPhone は圧倒的に優れています。ユーザーに対する配慮の、次元が違うのです。

もしかしたら iPhone の半分は、思いやりでできているのかもしれません。

Windows Phone や Android の開発者には、もう少しユーザーに対する思いやりを持って欲しいと願います。少しでも多くの開発者が、自分の両親や、子供や、祖父母の事も考えるような、優しい気持ちで開発に取り組むことができれば、スマートフォン市場の未来は今よりもっと明るくなるのではないでしょうか。

この記事の投稿者

崎 洋佑
崎 洋佑プログラマーもどき
さきラボの代表取締役。自称プログラマーもどき。
開発でよく使う言語は日本語。
IT技術よりも人が好きな、天然物のエンジニアです。